【書道家】歴史に名を遺す有名人10選
突然ですが、あなたは「有名な書道家の名前」を何人あげられますか?
3人までなら答えられるかもしれませんが、5人、10人となると答えられる人は少ないと思います。
1400年以上の長い歴史を持つ書道ですが、時代ごとに活躍した書道家は「1000人以上」いると言われています。
今回は歴代の書道家の中から、必ず抑えておきたい10人を抜粋しました。歴史ごとで順を追って紹介していきますので、ぜひ最後まで読んでいただけると幸いです。
書道家とはどういう仕事?
そもそも「書道家」と呼ばれる人たちは、どんな仕事をしているのでしょうか。
書道家は書道の技術と教養を持った専門家として、作品を提供する・書道を教える仕事です。一言で「書道家」といっても活動の内容は幅広く、働き方もそれぞれ違っています。
ここでは、「書道家はどういう職業なのかが分からない」という人のために、書道家の主な仕事内容について詳しく紹介していきます。
「書道家」と「書家」の違い
書道家:書道を用いたパフォーマンスなどの活動を中心に行う人
書家:書における高度な技術を持った専門家
「書道家」と「書家」という2つの言葉に意味の大きな違いはありません。しかし、正式名称は「書家」であり、「書道家」は「書家」の別名とされています。
現在は書道パフォーマンスなどの活動を軸にしている人のことを、「書道家」と呼ぶことが多いです。
※本記事では、一般的な名称である「書道家」を使います。
書道家の主な仕事
書道家の仕事の1つとしてあげられるのが、書道の作品を制作するアーティストとしての活動です。
企業などから依頼を受け、企業の商品やロゴ、ポスターや看板など、テーマに応じた作品の制作を行います。
現在はインターネットで注文を受け、要望に応じた作品を制作するという新しいスタイルも増えています。
歴代の有名な書道家
時代ごとの有名な書道家とその代表作について紹介します。古代・近代の代表的な書道家から、現在も活躍する書道家まで、1つずつ順を追って説明していきます。
古代中国の書道家
中国で書道が完成の域に達したのは、「書聖」と呼ばれる「王羲之(おう ぎし)」が活躍した東晋時代(3世紀頃)といわれています。
ここでは、中国の書道史では欠かせない人物の「王羲之」と、「草書の名手」と呼ばれた唐代(7世紀頃)の書道家「張旭」について紹介します。
王 羲之(おう ぎし)
引用:SHODO FAMより
生没年:303~361年
代表作:蘭亭序(らんていじょ)
王羲之(おうぎし)は、東晋時代に活躍した中国の書道家です。楷書・草書・行書に新しい表現方法を生み出し、中国だけでなく日本の書道家にも多大な影響を与えたことから、「書聖」と呼ばれています。
代表作は「蘭亭序(らんていじょ)」です。蘭亭という場所で書かれた詩集であることから、この名前が付けられたといわれています。
流れるような柔らかい筆づかいが特徴であり、「書道を学ぶ上での模範」として多くの人に学ばれている作品でもあります。
張旭(ちょうきょく)
引用:SHODO FAMより
生没年不詳
代表作:郎官石柱記(ろうかんせきちゅうき)
張旭(ちょうきょく)は、唐代中期に活躍した中国の書道家です。草書の名手として知られている人物であり、草書を崩した書体の「狂草(きょうそう)」というジャンルを生み出しました。
代表作は「郎官石柱記(ろうかんせきちゅうき)」です。張旭の作品はほとんどが草書ですが、「郎官石柱記」は唯一の楷書作品として知られています。
現存する資料は1冊しか残っていないため、貴重な作品として扱われています。
日本の三筆
「三筆」は、優れた3人の書道家を指す言葉であり、時代ごとで「寛永の三筆」や「幕末の三筆」などが存在します。
一般的には平安時代初期に活躍した「空海(くうかい)」「嵯峨天皇(さがてんのう)」「橘逸勢(たちばなのはやなり)」の3人のことを指すので、今回はこの3人について紹介していきます。
空海(くうかい)
引用:SHODO FAMより
生没年:774年~835年
代表作:風信帖(ふうしんじょう)
空海(くうかい)は平安時代初期の僧侶で、真言宗の開祖として知られている人物です。書道の名人としても有名であり、804年には遣唐使として中国(唐)に渡り、「書聖」と呼ばれる王羲之(おうぎし)の書法を学びました。
最も有名な作品は「風信帖(ふうしんじょう)」です。天台宗の開祖である最澄に当てた手紙であり、一通目の冒頭文「風信雲書~」から「風信帖」の名前がついています。
草書と行書が混じった行草体の作品であり、力強く厚みのある線で書かれているのが特徴です。
嵯峨天皇(さがてんのう)
引用:SHODO FAMより
生没年:786年~842年
代表作:光定戒牒(こうじょうかいちょう)
嵯峨天皇(さがてんのう)は日本の第52代天皇であり、平安京を開いた桓武天皇の第2皇子です。漢詩や書道といった中国の文化に通じ、書道は三筆の1人である空海から学んだといわれています。
代表作は「光定戒牒(こうじょうかいちょう)」です。楷書・行書・草書の3つの書体で構成されているのが特徴であり、国宝にも指定されています。
橘 逸勢(たちばなの はやなり)
引用:SHODO FAMより
生没年:782年(?)~842年
代表作:伊都内親王願文(いとないしんのうがいもん)
橘逸勢は、平安時代初期の書道家です。804年に三筆の1人である空海と共に中国(唐)に渡り、その才能から「橘秀才(きつしゅうさい)」とも呼ばれていました。
代表作は「伊都内親王願文(いとないしんのうがんもん)」です。草書と行書が混ざっている・字の大きさがそれぞれ違うなど、型にとらわれない自由なスタイルで書かれています。
しかし、橘逸勢が書いたと伝わっているのみであり、現在は真跡とされるものは残っていません。
近代の書道家
20世紀後半(1951年〜2000年頃)の日本を代表する書道家「井上 有一」と「榊 莫山」について紹介します。
井上 有一(いのうえ ゆういち)
引用:Amazon 公式サイトより
生没年:1916年~1985年
代表作:「東京大空襲」
井上有一(いのうえゆういち)は、昭和時代の書道家・教育家です。大きな和紙に向かって大筆で1文字を書くダイナミックなスタイルが特徴であり、アートとしての「書道」を開拓したことで知られています。
代表作は1945年に発生した大規模な爆撃「東京大空襲」です。教師をしていた学校で多くの避難民が亡くなり、仮死体験をしたという話が残っています。
榊 莫山(さかき ばくざん)
引用:Amazon 公式サイトより
生没年:1926年~2010年
代表作:「莫山つれづれ」
榊莫山(さかきばくざん)は、昭和・平成時代に活躍した書道家です。自由奔放な書風やキャラクターで人気を博し、「書道界の風雲児」と呼ばれていました。
書道の他にもエッセイの出版やバラエティ番組にも出演し、「バクザン先生」の愛称で親しまれていました。代表作はエッセイ「莫山つれづれ」であり、生き方や日々の生活、書道に対する思いについて書かれています。
現代書道界の有名人
現代の書道家は、筆を使ってアート作品を描く「書道パフォーマンス」を主軸に活動する人が多いです。
ここでは、書道パフォーマーとして現在も活躍中の書道家「武田双雲」「紫舟」「涼風花」の3人について紹介します。
武田双雲(たけだ そううん)
引用:武田双雲 公式サイトより
生年:1975年
代表作:NHK大河ドラマ「天地人」(2009年放送)の題字、バスクリン「日本の名湯」のブランドロゴ
NHK大河ドラマ「天地人」の題字
引用:書家うどよし 公式サイトより
武田双雲(たけだ そううん)は、熊本県出身の書道家です。路上で文字を書くストリート書家として活動をスタートし、大きな筆を使ったパフォーマンスでメディアに取り上げられました。
代表作は2009年に放送されたNHK大河ドラマ「天地人」の題字や、バスクリン「日本の名湯」のブランドロゴなどがあり、ロゴマークやグッズなどのデザイン書道で注目を集めています。
紫舟(ししゅう)
引用:紫舟 公式サイトより
代表作:内閣官房「JAPAN」ロゴ、NHK大河ドラマ「龍馬伝」(2010年放送)の題字
NHK大河ドラマ「龍馬伝」の題字
引用:書家うどよし 公式サイトより
紫舟(ししゅう)は、日本の女性書道家です。2010年に放送されたNHK大河ドラマ「龍馬伝」の題字や、内閣官房「JAPAN」のロゴを担当したことで知られています。
日本の伝統文化である書道を絵や彫刻、メディアアートなどで表現し、世界に日本の文化を発信する書道家・アーティストとして活動を続けています。
涼風花(りょう ふうか)
引用:涼風花 公式サイトより
生年:1975年
代表作:NHK土曜時代ドラマ「そろばん侍 風の市兵衛」(2018年放送)の題字
NHK土曜時代ドラマ「そろばん侍 風の市兵衛」の題字
引用:涼風花 オフィシャルブログより
涼風花(りょう ふうか)は、栃木県出身の女性書道家です。書道師範資格と硬筆資格を持ち、書道パフォーマンスや講座、テレビ番組や雑誌など、多くのイベントやメディアに出演しています。
NHKドラマの書道指導や商品ロゴの制作、「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」で知られる松本零士とのコラボ浮世絵の発売など、幅広い分野で活動を続ける人気書道家です。
書道家になるためには
先ほどは有名な書道家について紹介しましたが、ここでは、書道家になるために必要な過程やスキルについて紹介します。
書道家に興味がある方・書道家を目指している方に向けて解説していくので、進路を考える際に参考にしていただければ幸いです。
書道家になるための進路
書道家を目指すための進路の1つとしてあげられるのが、「大学・専門学校で書道を学ぶ」ことです。
大学の書道学科や書道専攻、書道の専門学校に進学することにより、時間をかけて書道の知識をじっくり習得することができます。
卒業後は書道家や書道の教員など、自分のやりたいことに合わせて自由に進路を選べるというメリットもあります。
書道家に必要な知識とスキル
書道家には筆や墨の使い方や文字の構造などの基本的な知識やスキルはもちろん、集中力をつける・正しい姿勢を保つといったトレーニングも必要となります。
書道家を目指す人には、「とにかくたくさん書く」ことが求められます。キレイな字を書くためには、知識を身につけるだけでなく、何度も繰り返し練習することが重要です。
書道家に向いている人
書道家に向いているのは、「集中力がある人」「向上心がある人」です。
書道は「正しく美しく書く」ことが必要不可欠であり、基本を徹底すること・集中力を高めて字を書くことが求められます。
書道家は知識やスキルを身につけ、何度も練習して技術を極められる、向上心のある人が向いている職業といえます。
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