相変わらず、自由に外出のできない、ちょっとばかり息苦しい毎日が続いておりますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?
これまで普通に楽しんできた出来事が簡単には行えなくなってしまった今日この頃。代わりに、新しい趣味を持った人も多いのでは? 僕もそんなひとり。アイドルのライブに出かけられなくなって以降、謎解きイベントにどっぷりはまっております。
イベント会場に散らばる様々な手がかりをもとに謎を解き、ときには一人で、ときには仲間と協力し合いながらゴールを目指す――リアル脱出ゲームとかリアル宝探しゲームとか呼ばれているアレです。
実は今、御茶ノ水駅と神田駅の中間にある「マーチエキュート神田万世橋」にて、古書をテーマにした謎解きイベントが開催されているんですよね。古書店の店主から手渡された4編の小説をヒントに、芥川龍之介が関わる幻の小説のありかを見つけ出すという――あらすじを聞いただけでワクワクしちゃうイベントです。
ぜひ参加してみたいとは思っているのですが、三重県に住んでいる僕は、まだなかなか東京まで足を運ぶことができません。現在の状況が好転することを、今はただただ祈るのみ。
というわけで、お近くに住まれているかたはぜひ参加してみてくださいね。感想なども聞かせていただけると嬉しいです。イベントの詳細は以下からどうぞ。
古書店まんせい堂奇譚(https://blacklabel.takarush.jp/promo/maach/)
ではここから本編。ひさしぶりの古書店紹介です!
今回は大阪編。大阪の古書店といったらまずはここ! 阪急梅田駅の近くにある「阪急古書のまち」に行ってまいりました。
阪急三番街南館1階〈うめ茶小路〉内にある「阪急古書のまち」。
もともとは阪急電鉄の高架下に立ち並ぶレトロ感漂うお店だったらしいのですが、阪急三番街のリニューアルとともに、今の場所へ引っ越してきたのだとか。
ご覧のとおり、純和風の木造建築でありつつも、全体がやや無機質なデザインで統一されているからなのか、どこか近未来っぽい雰囲気も持ち合わせており、なんとも不思議な印象を受けます。古書店のすぐとなりには時計、鞄、靴などを取り扱っているお店が並んでいるため、お洒落感もハンパありません。
古書だけでなく日本の古い絵画や人形、コイン、切手なども陳列。本に興味がない人でも思わず足を止めてしまうこと間違いなし。
阪急梅田駅へと繋がる人通りの多い場所なので、外国からの旅行客などもターゲットにしているのかもしれません。
貴重な古典籍を取り扱っている店も多数。このような種類のお店は、古書店慣れしていない僕のような人間にとってはなかなか入りにくいものなのですが、ここは店舗が新しく、人通りも多くて活気があり、しかもお洒落なため、ウィンドウショッピングを楽しむような感覚で見て回れるのがよいですね。今後、古書店が生き残っていくための新しいスタイルのひとつなのかもしれません。
さて。次にやって来たのは阿倍野区文の里。まず、文の里っていう名前が素敵じゃないですか。期待が高まります。
地下鉄谷町線文の里駅を降りて、高校の横を通り過ぎ、静かな住宅街の中を進んでいったところに、目的の古書店はありました。
「居留守文庫」
住宅街の中に突如現れた古びた建物。まるでその部分に別の写真を切り取って貼りつけたような――そんな違和感がありました。なんともミステリアスな店がまえ。この古書店は面白いに違いない! こういう予感はたいてい当たるものです。
店の壁と一体化した書棚も、実にいい味を出していました。なんせ住宅街のど真ん中です。ここに本が並んでいたら、とても目立つはず。でも、僕が訪れたのは梅雨の時期。この日も雨模様だったため、残念ながらその光景を見ることはできませんでした。
ワクワクしながら店内へ。
店内はさらに古めかしく、まさしくここは異空間。決して大げさではなく、神々しさを感じるほどでした。
店長さんにお話を伺ったところ、大正時代に造られた長屋の一部をリフォームしたものなのだとか。なるほど、この建物がひときわ異彩を放っていたことにも頷けます。
古書にはこのような古めかしさがとてもよく似合いますね。昔の土間を彷彿とさせるコンクリートの床やむき出しになった天井の梁が、これまためちゃくちゃ心地よくって。
この古書店の最大の特徴は、木箱を組み合わせて造られた書棚。すべて店長さんの手作り。
本の大きさに合わせて木箱を造っているため、大きさもいろいろ。
店内には大小さまざまな木箱が隙間なく積み上げられています。木箱が複雑に組み合わさり、テトリスみたいになっている箇所も。
本のジャンルは多岐に渡っていますが、木箱ごとに丁寧に分類されているため、煩雑な印象は受けません。
木箱の組み合わせで書棚ができあがっているので、おそらくレイアウトの変更も容易なのではないでしょうか。見た目がわかりやすくて楽しいし、整理も楽そうだし、まさにアイデアの勝利。思わず拍手を贈りたくなりました。
店の奥にあった階段
二階に続くこの階段が、これまたレトロでそそられます。残念ながらこの先は立ち入り禁止。一体、どんな空間が広がっているのか、興味は尽きません。
いいなあ、このレトロ感。
階段の横だけ内壁が露出していたのですが、この昭和感あふれる雰囲気がまたサイコーに素晴らしくて。壁に飾られた地図のパズル、僕も持ってました! 懐かしいなあ。
居留守文庫という不思議な店名ですが、実はとっても深い意味があります。お店のサイトに詳しく書いてありますので、ぜひそちらにも目を通してみてください。僕の下手くそな説明なんかより、何百倍も心に染み渡るはずです。
店長さんはとても気さくなかたで、アポもなしにいきなりやって来た失礼極まりない僕にもやさしく接してくださいました(感謝)。
「ところで、みつばち古書部には行かれましたか?」
「みつばち……え? なんですか、それ?」
「私がプロデュースした古書店です。すぐ近くなので、ぜひそちらにも立ち寄ってみてください」
というわけで、急遽もう一軒、古書店を訪ねることになりました。そのお店がまためちゃくちゃ楽しいところで……おっと、ここで枚数が尽きてしまいました。「みつばち古書部」のお話はまた次回。お楽しみにっ!
《今回、お世話になった古書店さま》
居留守文庫
火・金定休 10:00~19:00
大阪府大阪市阿倍野区文の里3-4-29
https://www.irusubunko.com/
※2020年8月中はお休みだそうです。ご注意ください。
《今月のくろけん》
夢枕獏さんや夏目房之助さんなど、本好きな方たちの書棚を撮影した写真集『絶景本棚2』(本の雑誌社)が8月24日に発売予定。著名な方たちのものすごい書棚に混じって、我が家の書棚もちょびっと紹介していただいております。ありがたや、ありがたや。
http://www.webdoku.jp/kanko/page/9784860114466.html
黒田研二(くろだ・けんじ)
作家。出版社勤務を経て、2000年『ウェディング・ドレス』(講談社)で第16回メフィスト賞を受賞してデビュー。主な著作は『今日を忘れた明日の僕へ』(原書房)、『カンニング少女』『キュート&ニート』(以上文藝春秋)など。近年は『逆転裁判』『逆転検事』のコミカライズ(講談社)、『真かまいたちの夜』のメインシナリオ、『青鬼』のノベライズ(PHP研究所)など、ゲーム関連の仕事が中心。得意なスポーツは水泳、スキー。好きなものは柴犬、アイドル。
Twitter:https://twitter.com/kuroken01