吉村昭自選作品集をお売り頂きました(全15巻+別巻 全16巻揃 新潮社)

吉村昭自選作品集 全15巻+別巻 全16巻揃 新潮社

【吉村昭自選作品集について】

日本を代表する小説家は沢山おりますが、吉村昭(よしむら あきら)も、その中の一人ですね。ですが、他の作家達とはまた一つ抜きん出ているのが、何と言っても“ノンフィクション”へのこだわりでしょう。彼はフィクションではなく、出来得る限り史実に基づく作品を書き上げようとしていました。数々の受賞も獲得し、今でも語り継がれる素晴らしい作家です。

東京に吉村昭記念文学館もございまして、今は生誕90周年記念企画展が行われています。
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【吉村昭の作品(熊嵐)】

代表作としては、破獄、戦艦武蔵等が主ですが、私個人的におすすめしたいのが『熊嵐』です。こちらは約100年前、大正時代に北海道で実際にあった超巨大熊により、一晩に何人もの村人たちが襲われ、獣害にあった悪夢のような数日間のお話です。これは本当に恐ろしいです。テレビでも再現ドラマで取り上げられた事もあり、私も見ておりましたが、本当に恐ろしいです。怖すぎてもう一度言ってしまいました。心霊の特番など、ホラーも私はよく見ているのですが、結局のところ、生きている生物が一番怖いです。5日間で7人も亡くなるという悍ましい事件でした。今でもその慰霊碑が残されています。それを忠実に再現している吉村昭の文章力と構成力には感服します。

更に惨いのが、その襲われ方。生きながらにして食べられていくという、その恐怖。一体どれ程の痛み、虚しさ、恐ろしさを感じていたのか、当たり前ですが私には想像もつきません・・・。一度襲うことに成功した熊のもっと怖い所が、人間の味を覚えてしまったという事です。またそれが集落であった場合には、場所までも記憶されてしまっています。亡くなられた方々には、本当に心よりお悔やみ申し上げます。

クマというと可愛いマスコット的なイメージも少なからずあるとは思いますし、私もそういった熊のぬいぐるみ等は可愛らしいと思いますが、実際の熊を考えてしまうと何とも言い難い気持ちになりますね・・・。今でも熊に関する被害は出続けており、特に恐ろしいヒグマが生息しているのは北海道だけなので、地元にお住まいの方たちからすると、恐ろしい以外の何ものでもないですね。
吉村昭自選作品集 装丁
今回ご紹介させて頂いた『熊嵐』ですが、勿論こちらの自選作品集の中にも掲載されています。11巻は動物文学でまとめられているのですが、その中の最初の作品となっております。私としても普段はほっこりとした心温まるような物語を好んではいるのですが、時には真逆の物語を読んでみるのもいいのかもしれませんね。このお話がフィクションであれば、あぁ怖かった・・・で済むのですが、ノンフィクションという事で、より恐怖心が勝るのかと思います。お亡くなりになられた方達の事を思うと、本当にいたたまれない気持ちになってしまいますが、ご興味がおありの方は、こちらの物語だけで新潮文庫も出版されておりますので、一度読まれてみてはいかがでしょうか。


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