(限定1000部 愛蔵版 北杜夫全集 全15巻揃)
岐阜県の方より限定版をお譲り頂きました。有難うございました。
北杜夫といえば本名は斎藤宗吉、父は有名な歌人・斎藤茂吉ですが、彼の母親もなかなかの人だったようです。
彼の母・斎藤輝子は、いわゆる「お嬢様」でありながら、活発で快活。歳を重ねてもその性格は変わらず、夫・茂吉の死後、旺盛なバイタリティーと行動力で世界各地を旅行し、79歳で南極に行くほどだったとか。
そんな父母の影響があってか、杜夫も親から言われた医学の道以外に文学、昆虫学など多彩な趣味を持ち合わせていたとのこと。その為かどうかは分かりませんが、彼の著作も、芥川賞を受賞した「夜と霧の隅で」といった純文学はもちろん、「どくとるマンボウ」でおなじみのエッセイから、児童文学(さびしいシリーズなど)、ファンタジー、SF(これがなかなか秀悦です!)まで、幅広いジャンルを執筆しています。
どの作品も、元来の日本文学には無かった、どこかユーモアのある作品で、当時から人気だったようですね。
ちなみに「北杜夫」というペンネームは親の七光りを嫌ってつけたもので、ドイツの作家トーマス・マンに傾倒していた為、作品「トニオ・クレーゲル」からもじったそうです。有名人の親と、しかも同じ土俵でやっていく難しさは今も昔も変わらないようですね。
ちなみに、小職は子供の頃、NHKで放送された舞台劇「船乗りクプクプの冒険」で名前を知ったのが始まりです。そして文庫を買って、読み返しては何度涙を流して笑ったでしょうか。その後、新潮文庫の彼の作品をひたすら読み漁り、「文芸首都」という文芸同人を知ったのも、「躁うつ病」という言葉を知ったのも、そして奥野健男や埴谷雄高を知ったのも彼の作品です。後に吉本隆明ファンとなった自分としては、思わぬところで埴谷雄高と繋がって、嬉しく思ったものです。
子供時代だけでなく、「どくとるマンボウ青春記」や、辻邦生との対談「若き日と文学と」(中公文庫)などの書物は、青春時代になっても、北杜夫は愛読しておりました。
ご興味のある方はぜひ、新潮社の『北杜夫全集』をどうぞ。彼の執筆した様々なジャンルから、バランスよく楽しめる作品を収録しています。中でも「楡家の人々」は自身の家族をモデルにしていることで有名です。誰がどの人物をモデルにしたのか分かりやすいので、作家ではなく父としての斎藤茂吉が伺えるかもしれませんね。
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