『ショーペンハウアー全集 』(別巻含む全15巻揃い/白水社) を京都府京都市山科区より宅配にて買取させていただきました。
ある日、小学校からの友人が自殺を考えていると人づてに聞いて、自殺を考えている本人に連絡をすると病院にいるとのことで会いに行きました。
話を聞くと未遂で今この有様だと笑って話していたが、痛々しい様子は布団の上からでも十分にうかがい知れた。あまり長居していても、申し訳ないことにこっちの精神が削られていくだけだったので帰ろうとすると、「これ面白いと感じてくれると思うから読んでみてよ。」と、言って渡されたのが『自殺について/ショーペンハウアー著』でした。
この本を渡されたときは本にカバーが付いていて、本のタイトルは分かりませんでしたし、本当に失礼な話ですが少しでも早く帰りたかった自分は「わかった。読んでみるよ。」とだけ返事をして帰りました。
とりあえずタイトルだけでも確認しようと帰りの車の中で本を開いてみると「自殺について」というタイトル本で自分に対するボケだったんじゃないかと思い、その場で本のタイトルを確認してやらなかったことを後悔しました(笑)
しかし、本には読んだ形跡があります。本当に読んで、尚且つ今回ような精神状態の人間が勧めてくるということは、本当に面白かったんじゃないかと思い、読んでみることにしました。
その友人と同じ解釈に至ったかは分かりませんが自分的に読んで面白いと言われる所はなんとなく分かり考えさせられるものとなりました。
Q.自殺することをなぜ迷妄と考えるか?
A.自殺では、目的を達成できないから。もしくは、目的に対して誤った手段を取ることは愚かだから。
Q.自殺する目的を強いて挙げるとすればなに?
A.苦痛からの開放。
Q.自殺するメリットってあるの?
A.死ねる。個体性の消滅。
ここまでを統合して考えると、世界の本質である苦悩から、個体性を消滅させることで開放されることは理にかなっていないと考えらえ、個体自身は苦痛から逃れることは可能だが、しかしそれだと、苦痛一般からは逃げることはできません。
では、個体が消滅したらどうなるかと考えると、その個体は現象として消滅するが、実在する意志としての世界も、その他の個体性も存続します。
当然、個体が消滅したとしても苦痛は残る。なぜなら、苦痛は意志の本質だと考えられているからです。
しかし、実在する意志としての世界も、その他の個体性も自分自身とは関係のないものだとも言えます。
違う見方をすれば、『自分の苦痛』は、自分という個体性の現象により消滅できるのではないか、とも考えられます。『自分の苦痛』は認識されているものと・認識されていないものとに分けることができ、認識されているものは消滅させることはできるが、認識されていないものは消滅させることはできません。もう少し砕いて言うと、認識されているものは”主観が認識する苦痛”・認識されているものは”意志の本質に因る苦痛”ということです。
うだうだと長くなってしまいましたが、このショーペンハウアーは厭世主義で「人生は最悪である。」と考えています。そう、人生は悪いことだらけだと。上司と酒を呑むのも面倒くさい・彼女の小言ばかり聞かされるのもつまらない・などなど。
だったら割り切ってしまえばいいんです。人生が最悪なら、その最悪を和らげる『いいこと』を探しましょう。
一般的な厭世主義では「この世は最悪なので死ぬしかない。」と考えますが、ショーペンハウアーはそう考えず、その逆を行きました。
『人生の「最悪」を和らげるための行動、それが生きること』だと。人生が最悪であり、生きるしかない以上、自分たちはなんとしてでもそれをより良くしなくてはなりません。
ここからは自分的な解釈になってくるのですが、自分たちは死ぬことを拒絶し恐れていると思います。
例えばですが、自分たちは日々なにかの為に行動を起こします。犬の散歩をするために行動・コンビニ行くために行動など様々な理由があると思います。
しかし、厭世観では「マイナスなことを拒む為にアクションを起こす」と考えます。マイナス=死、と考えれば、死ぬことを拒むのです。
一般的な思考からすると、かなりマイナス思考ですが、これで厭世主義との差を明らかにすることができますね。
厭世主義の人間であるなら、マイナスなことを拒まず、そのまま死を選びます。死んだら救われるとかいう意味の分からない妄想に取り憑かれいるからです。しかし、当然、死んでも救われることはありません。
結局、結論としましてショーペンハウアーは自殺について否定していました。
多分、自殺の死の先に極楽浄土があると思い込んでいる人が起こす愚かな行動だから、死んだからといって、救われる訳ではないということで彼も馬鹿らしくなり大人しく病院にいるのだと思います。
厭世主義の人間が自殺を否定的だということ、また、上に書いたようにその捉え方も大変おもしろかったです。
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