『沈氏硯林』(二玄社/昭和56年発行)を1帙全4冊揃いでお譲りいただきました。どうも有難う御座いました。
沈氏硯林は「しんしけんりん」と読みます。どのような本かというと「硯コレクター沈石友が愛蔵していた硯の拓本」です。愛蔵「していた」というのは没後に沈氏硯林が刊行されたためです。
なお当ブログでも度々ご紹介している呉昌碩と沈石友は友人です。沈石友が名硯を手に入れる度に呉昌碩に銘を依頼し、それを趙古泥ら彫琢者に刻してもらっていました。
ただでさえ質もデザインも素晴らしい硯だというのに、呉昌碩や趙古泥といったその道のエキスパートの手が加えられ、さらに意義深い逸品となったのです。
4冊の和本が拓本で、茶色の本が図録と解説です。
硯を紹介する本ならば、なぜ図録ではなく拓本だったのでしょうか。
上が図録、下が拓本です。
硯は基本的には黒や濃い灰色だったりするので、彫り部分が写真だと彫りがわかりにくく、一方採拓したものは凹凸部分がはっきりと分かります。
そのため、硯だけではなく石碑や青銅器など、文字や彫刻など凹凸に価値があるものは拓本にされることが多いのです。
彫られた深さや位置によっては濃淡がでて墨絵のような美しさがありますね。
以前当ブログで『古名硯』の蓬莱硯をご紹介しましたが、芸術的な硯にはストーリー性があります。
上の写真は「缶盧自写小象硯」。中国の蘇軾氏が詠んだ「廉泉」という句があります。長いので割愛しますが、簡単に説明すると
「水面に写るのはありのままの自分の姿。白髪が混じっている…年を取ったなぁ。どこへ行っても映る姿は変わらない。自分の本性と向き合って楽しく生きていこう。」
かなり端折ったのでニュアンスが伝わるか自信がありませんが・・・そんな感じです。
廉泉は実際に存在する泉で落雷によって突然湧出しました。硯面を泉にみたてて、廉泉の句は硯のようにいつまでも伝えられるでしょう。そして、沈石友と呉昌碩の交わりも硯と共に長く続くだろう、ということ描かれています。
友人同士ということもあり、『沈氏硯林』で紹介されている硯には二人の仲睦まじさや信頼関係を表した銘が多く、他の名硯図録や拓本とは異なる「思い」の部分が色濃いです。硯の美しさのみならず大変趣き深い本となっています。
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