『ジュール・ルナール全集』(臨川書店/全巻揃)をお譲りいただきました。
日本では女優大竹しのぶさんが主演して演劇にもなっている『にんじん』という作品が最も有名でしょう。そんなルナールの未翻訳作品も含めた作品全てを新訳して収録した全集となります。
先ほども書きましたが日本でルナールと言えば『にんじん』で、彼の事は児童向けの作品を書いていた作家。という印象を持たれがちではありますが、実際のところはどうなんでしょうか。『にんじん』という作品を改めて読んでみますと、確かに取り巻きの人間たちにいじめられる可哀そうな主人公にんじんという風にも読めますが、もう少し慎重に観察してみますと、そう単純な構造にはなっていない事に気づくと思います。どの登場人物もある種一貫性が無いように見えて、なんだかフワフワしています。しかしこれは、現実に立ち返ってみるとそんな事は当たり前で、一貫性のある動きをする人間の方が珍しいですよね。ルナールは実のところ人間への興味よりも自然に対する興味が強かったとされています。代表作である『博物誌』もこの『にんじん』も自然と触れ合っている所を書いているときの方が生き生きしていますし。そんなルナールの感覚で書かれたものは当時からすれば特異なものでした。当時は登場人物の内面と行動が一貫しているのが作品では普通でしたからね。が、現代の私たちからすれば、『にんじん』の場面を切り取った一瞬、そこで登場人物たちがその場その場の一貫しない行動するのは、リアリティを持って私たちの目に映ります。昔『にんじん』を読んだことがある人も名前だけ知っている人も、是非今ルナールの作品を読んでみると何か気づくものがあると思います。
そんなルナールを知る上で大切な日記も全集に収められています。特に出版や公表するつもりのなかったルナールの日記ですが、死後その文学性の高さから出版されています。実際読んでみますと淡々とした日記というよりも第三者視点で書かれていたりもするので、不思議な小説を読んでいるような感覚に陥ります。一つの読み物として大変面白いのでこちらも是非。
フランスの自然を見つめた作家ルナールの全集をご紹介いたしました。
三月兎之杜では全集の買取も行っております。近年は出版事情の問題などで、お値段をお付けするのが難しい本もありますが、しかしまだまだ価値の付けられる本は数多くあります。まずは当店にお気軽にご相談ください。
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